健生堂コラム


女性の不妊症と低体温症(冷え症)・低血圧症・貧血・生理不順との関係について、以下に記述
してみたいと思います。

女性の不妊症は、低体温症(冷え症)・低血圧症・貧血・生理不順と関連が深く、体質・症状も類似した要素が見られます。

現代人は、食生活の乱れがあり、ミネラル・ビタミンの不足傾向があるとされています。
例えば
 ※ 手軽さのために摂取される加工精製食品では、その加工精製中に多くのミネラル・ ビタミ
   ンが洗い流されてしまいます上に、食品添加物によってミネラルの吸収が阻害されるとされ
 ※ また、女性は生理に絡む出血などに伴って栄養を失うために、貧血になり易く、また、無理
   なダイエットをすると、更にミネラル・ビタミン・その他のアミノ酸などの栄養素が不足し
   ます。
 ※ また、活性酸素の生成に深く関係する精神的なストレスの重積などによる代謝などの生体の
   機能低下が生じ易くなります。
 ※ また、夏の冷房や冷たい過剰な飲み物の摂取、冬の寒冷の環境などにより体内のエネルギー
   源のATPの消化が高まる結果、体内の熱量低下により、生体の機能低下が生じ易くなる場合
   もあります。

これらの複雑な原因が重複して、「氣」「血」「水」の流れも停滞させ、低体温症(冷え症)や慢性低血圧症・貧血、生理不順、不妊症を引き起こす原因にもなります。

これらのビタミン・ミネラル・アミノ酸などの栄養素の不足や、寒冷環境・精神的なストレスの重積から生じる活性酸素が低体温症(冷え症)や低血圧症・貧血、生理不順、不妊症にどの様に係るかについて記述して参りたいと思います。

低体温症(冷え症)について  
西洋医学的な低体温症(冷え症)の捉え方
栄養学的な低体温症(冷え症)の捉え方
糖代謝では、糖質がブドウ糖となり、細胞内のミトコンドリアへ取り込まれ、そこで解糖系・TCAサイクル(クレブスサイクル)の代謝過程でエネルギー源であるATP(アデノシン3リン酸)を産生します。  
            ATPase   
      ATP――――――――――――>ADP         
           エネルギー放出   

ATP(アデノシン3リン酸)は、ATPaseという酵素でADP(アデノシン2リン酸)に分解される時にエネルギーを放出します。このエネルギーを利用して、ミ ネラルやビタミンなどの介在の基に、細胞内のあらゆる代謝(脂質代謝・タンパク質代謝も含めて)が行われ、これらの代謝はホルモンで調節を受けて、生体の活動を行うことが出来ます。     

また、もしミネラル・ビタミンが不足すると、ATP由来のエネルギー利用効率が低下し、生体内のあらゆる代謝や活動が阻害され、低体温症や貧血を起こし易くなり、免疫細胞の働きも低下し、細菌やウイルスに対する抵抗力も低下するため、かぜを引きやすくなったり、免疫の誤作動による自己免疫疾患やアレルギー疾患なども発生しやすくなります。  

社会環境的な低体温症(冷え症)の捉え方
冷房や寒冷の環境の継続や、精神的なストレスの重積による自律神経の失調(交感神経緊張など)から生じる慢性的な血流障害も低体温症(冷え症)の引き金の原因の一つになります。

故に、アミノ酸などの栄養のバランスを整え、特にミネラル・ビタミンの補給が肝要となり、また、冷房や寒冷の環境の継続や、精神的なストレスの重積などの社会環境から生じる生体の歪みをできるだけ矯正して行く努力が必要になります。

東洋医学的な低体温症(冷え症)の捉え方
腎の働きの詳細につきましては後述しますが、腎精(=腎陰)は、先天的に備わった精「先天の精」に、飲食物の運化によって得られた栄養物の最も精微なもの「後天の精」が絶えず補充されるもので、腎精は、ホルモンの分泌に関与する内分泌系全般の機能に深く関与し、成長・発育・生殖、および生命活動を維持する物質的な基礎となるもので、腎精(=腎陰)が充実していれば、腎気(=腎陽「命門の火」)により、体温を調節・維持すると共に成長・発育・生殖、および生命活動が維持されます。故に、腎の機能が低下した状態では、低体温症(冷え症)・低血圧症・不妊症・貧血・生理不順が誘発されることから、漢方療法では、腎精(=腎陰)を養い、腎気(=腎陽「命門の火」)を高めることに努めます。

低血圧症について  
出血や脱水などの急性の循環血液量の減少などが原因となる急性低血圧症と異なり、 慢性的な循環血液量の低下や心拍出量の低下、末梢血管抵抗の減少などを伴う低血圧症の症状は、朝が辛い、頭痛、頭重、眠気、疲れやすい、全身がだるい、めまい、ふらつき、食欲不振、気力が湧かない、月経不順などの症状を呈し、同時に内臓機能低下も生じ、便秘や胃下垂などを訴えることもあります。低血圧症はファースト食品、インスタント食品などが影響する慢性的な栄養不良、また毎晩寝るのが遅い夜型生活、睡眠時間の不規則やストレスなどが原因となり、自律神経の乱れ、ホルモン分泌も乱れることから生じるとされています。この低血圧症は女性に多いとされ、循環血液量の減少や慢性的な栄養不良が関係することから、不妊症、低体温症(冷え症)・貧血・生理不順などと関連が深いと考えられます。因みに低血圧症への取り組みには、一般に早寝早起き、規則正しい食事、定期的な運動、シャワーや読書、音楽など自身がホッとできる習慣を作るストレス解消法などが推奨されています。  

低体温症(冷え症)や低血圧症・貧血になると、どのような状況が起こるのでしょう か?
* 元気がなく、疲れ易くなり、寒がるようになります。
* 新陳代謝も低下し、免疫力も低下しかぜを引きやすくなったり、また、薬物代謝能力も低下す
  るため薬が効きにくくなったり、薬の副作用を受けやすくなったりします。
* 肌の細胞の新陳代謝も弱く、遅くなり、汚れたコラーゲンを長く留めるために肌がくすんでき
  ます。
* 卵巣の発育も悪くなり、卵胞ホルモン・黄体ホルモンの分泌も低下するために、血清卵胞ホル
  モン(エストロゲン)黄体ホルモン(プロゲステロン)の低下・月経周期の乱れ(生理不順)
  ・不妊症などが生じやすくなります。
* 自律神経系の失調からくる血液循環障害が生じ、慢性的な循環血液量の低下や心拍出量の低下
  末梢血管抵抗の減少などを伴う低血圧症になると、朝が辛い、頭痛、頭重、眠気、疲れやすい
  全身がだるい、めまい、ふらつき、手足が冷える、しびれ、肩こり、食欲不振、気力が湧かな
  い、生理不順などの症状を呈し、同時に内臓機能低下も生じ、便秘や胃下垂など生じやすくな
  ります。    

月経が生じるしくみと妊娠の成立の関係について
思春期近くになりますと、脳の視床下部からの刺激をうけて脳の下垂体前葉から卵胞刺激ホルモンが分泌され、血液中に入って卵巣中に到着して、卵胞を刺戟して成熟させ、その結果、卵胞から卵胞ホルモンであるエストロゲンが分泌されます。このエストロゲンの働きによって、皮下脂肪が発達したり、乳房も発達して女性として完成されて行きます。

卵胞から放出されたエストロゲンは血液中に入り、その量が増えてくると、その信号が視床下部や下垂体前葉に伝えられ、下垂体前葉からの卵胞刺激ホルモンの分泌が減少しますが、その信号が視床下部に伝えられ、視床下部からの刺激を受けて下垂体前葉から黄体形成ホルモンが分泌され、血液中に入って卵胞を刺戟して排卵を促します。その結果、卵胞から卵子が放出されて受精可能の状態となります。

排卵後の卵胞を黄体といいますが、黄体から卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が血液中に分泌され、これらのホルモンの協同作用によって基礎体温は高温相となります。

卵子は排卵後約24時間程度、精子は女性の体内で約48時間程度受精能力があるとされていますので、自然妊娠のタイミングは、月経周期が28日の女性の場合、月経開始日を1日目として、12日目から15日目の期間が一般的とされています。

排卵後は、基礎体温は高温相となりますが、受精が起こらないと黄体が退化し、血液中のエストロゲンとプロゲステロンは減少し、基礎体温の下降と子宮内膜の剝離が起こり、月経となります。

そして、血液中にエストロゲンとプロゲステロンが分泌されなくなると、下垂体前葉から卵胞刺激ホルモンが分泌され、卵胞の成熟を促す性周期が始まります。   

卵胞の発育―成熟―排卵―黄体形成―月経の繰り返しを性周期、または月経周期といい、その間隔はほぼ28日とされています。

  
                              出典 家庭医学大事典(小学館)

一方、受精は、排卵後卵子が卵管の中を移動して卵管膨大部に達して、精子と出会ったときに起こりますが、受精卵は7日目位までに子宮内に移動し、肥厚、増殖し、分泌液を分泌している子宮内膜の中に沈下埋没し着床するとされています。受精卵が子宮内膜に着床した際には、プロゲステロンとエストロゲンの協同作用によって、受精卵が栄養を受けられるように準備が整えられます。

妊娠が成立すると、血液中のエストロゲンとプロゲステロンが減少しないため、基礎体温は高温相を維持し、無月経となります。

また、エストロゲンによって主に乳管の発育を促し、プロゲステロンとエストロゲンの協同作用によって乳腺葉や腺房が発達するとされています。妊娠末期になると、乳房は充分な発育をとげ、乳汁分泌の準備が整うのですが、分娩が終了すると、プロゲステロンとエストロゲンが急激に血液中から消失し、妊娠中にはエストロゲンとプロゲステロンで抑えられていた下垂体から分泌されるプロラクチンが乳腺細胞に働きかけて乳汁が多量に作られるようになります。また、授乳段階では、赤ちゃんによる乳頭の刺激が脳に伝わり、下垂体後葉からオキシトシンの分泌を高めます。このオキシトシンには、乳腺や乳管の周囲をとりかこんでいる筋上皮細胞を収縮させて、乳房中の乳汁を排泄させる作用があるとされています。故に、赤ちゃんに乳頭を吸ってもらう程母乳の出がよくなるので、最初母乳の出が悪くてもあきらめることなく授乳を続けることが大切とされています。

不妊症の場合は、以上のような過程において、特に卵巣の成長・発育が不十分なため、卵胞からの良質な卵子の形成に障害を生じたり、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の血液中への分泌が不充分となり、基礎体温の高温相の不安定が生じたり、子宮内膜への着床失敗などの種々の問題が生じることが推測されます。

漢方療法の不妊症に対する考え方の基本は、栄養のバランスを整えながら、卵巣の健全な成長・発育が重要であり、卵胞ホルモン(エストロゲン)が血液中へ分泌される卵胞期の充実が、健全な黄体ホルモン(プロゲステロン)の血液中への分泌を促し、健全な基礎体温の高温相が黄体期に得られ、妊娠が成立することを重視します。そのような状況になるように生体の歪みを矯正するように努めます。


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